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「ねぇ、今日は何の日か覚えてる?」
この光景を何だか覚えているような気がする。病室に入ってきた女の子は、淡い青色のワンピース姿。柔らかそうな栗色の髪に思わず触れたくなる。
その問いに答えようと手帳を捲った。
昨日の僕はこんな事を書いている。
『梨花さんは僕のクラスの学級委員長。明日は、梨花さんがお見舞いにケーキを持ってきてくれた日らしい。』
「えっと、梨花さんがお見舞いにケーキを持ってきてくれた日…で当たってますか?」
「ピンポーン!せいかーい!って事で、ケーキ持ってきちゃった〜!…ナースさんには内緒だよ?」
口元で人差し指を立てる仕草にドキッとした。こんな可愛い子が、何で僕なんかのお見舞いに来てくれるのか。しかも、過ぎ去っていった僕の記したものを見ると「毎日」とあった。
毎日、この子はお見舞いに来てくれている。
このややこしい病の僕に、寄り添ってくれている。
「圭太はどれがいい?って言っても2種類しか無いけど」
圭太。僕の事を名前で呼び捨てしてくるという事は、それなりに近しい人物なのは間違いない。
僕はイチゴの乗ったショートケーキを選んだ。彼女はフルーツたっぷりのロールケーキ。何となく、梨花さんが好きなような気がしたから。口に運ぶと、甘酸っぱい味が広がった。
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