大店

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大店

「笑えるくらい大昔の話よ。  この店の前にデパートみたいなストアーが出来てね、  それまでは、小さな八百屋ぐらいしかなかったのに。  初めて町にできたスーパーで  この町以外の人も電車を使って買い物にきてて。  それはもう、賑やかだった。  弟が  『なんか商売を始めたい。   食べ物屋が、これからは儲かるから   手伝ってくれ』  そう言われて、  私は、料理作ること好きだし、  『じゃ、一階が店舗で二階は住居の店を建ててよ』  そう言うと、直ぐに建ててくれて。  弟は決断も仕事も早いから、直ぐに営業を始めたのよ。  そうしたらね、  思いのほか、店が流行って。  ああ…作っていたのは、“お好み焼き”。  鉄板のあるテーブルを8台くらい置いてね。  自分で焼けない人には、奥で作って出して。  今じゃ、特に珍しくもないけれど  当時は、ホントに画期的だったのよ。  高度成長時代の一寸前でタイミングも良かった。   あれよあれよ、と流れに乗って、お店は大流行(おおはやり)  持ち帰りもやったりしたら、それも面白いように当たって。  常連さんも付いてくれて、忙しかったけれど楽しかったわ。  その“お好み焼き”屋の売り上げを元手に、この店を作ったのよ」 「なんだかドラマみたいですね」 「そうそう、ドラマみたいな、ほんとの話。  じゃ、私は、玄孫のお迎えがあるから、  これで失礼するわね」
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