25人が本棚に入れています
本棚に追加
第十七話
ーーDAY6ーー
「んーっ、スッキリ!」
私はノビをしながら起き上がった。
はじめの頃は朝起きて、前の夫だったら…とビクビクしていた私も、6日目となると緊張感も薄れてくる。
今日はキッチンに下りるとすでに朝食とお弁当が出来上がっていた。
(はやっ!)
「陽一さん、おはよう。早いのね。」
「美穂ちゃん、おはよう。ちょっと寝つけなくてね…」
そういう夫は少し元気が無さそうに見えた。無理をして笑顔を作っているような…
でも、きっと聞いても心配をかけまいと「なんでもないよ。」と言うのは目に見えていたので、私はあえて聞かなかった。
唯と奈月はいつもの時間になっても起きてこなかった。
予想通り、昨日遅くまでスマホを触っていたのだろう。
起こしにいくと、眠い目を擦って起きてきた。
朝食の時、珍しく唯が夫にお願いをする。
「お父さん、今日お仕事終わってから公園に付き合って欲しいんだ。ダメかな?」
「もちろん良いんだけど、どうかしたの?」
奈月は「あぁ〜」とわけを知っているらしく納得しているが、私と夫は???状態だ。
「夕方の公園風景を描きたい。でも、ちょっと私一人だと不安だし、お父さんがいた方が安心だなって。」
唯は滅多に頼みごとをしない。
そんな唯に頼まれたことが嬉しいらしく夫はにこにこしながらOKをした。
「唯ちゃんと夕方デート楽しみにしてるよ。」
夫が笑顔で言うと、唯は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
あっという間に夕方になり、私がパートから戻ると夫と唯は公園へ出かけていった。
今日は奈月は打ち上げでいないので、夕食は3人分。
「こういう家庭って良いなぁ。」と独り言を言って鼻歌を歌いながら夕食の準備をした。
夫と唯が帰ってきたのは、7時半過ぎ。
玄関で出迎えると、唯の様子がおかしい。
何かあったのかな?と思い、唯に聞くが、「何でもないよ。大丈夫。」としか言わない。そして、すぐに自室へあがってしまった。
夫に聞いてみるが、夫も首をかしげている。
「公園で絵を描いてるときは、すごく嬉しそうだったんだよ。僕とおしゃべりしながらすごく楽しそうに描いていたんだ。」
「それで、そろそろ帰ろうかってなったときに、唯が『トイレに行きたい』って。だから、公園のトイレに行って、僕は外で待ってた。
で、10分ぐらいして唯が出てきたらあんな感じなんだ。僕も何があったのか聞いたんだけどね…答えてくれなくて。」
何もおかしなところは無さそうだけど…トイレの中で何かあったのかな?まさか、痴漢とか?
「その間、誰もトイレに入らなかった?」
「うん、入らなかったよ。僕も痴漢じゃないかと思って聞いたんだけど、違うって。」
唯は夕食の時も「いらない。」と言って下りてこなかった。
私と夫はすごく心配だった。でも、その後も聞いても絶対教えてくれなかった。
私と夫は話し合った結果、奈月に聞いてもらおうということに。親に話せないことでも、奈月になら話せるんじゃないかと思ったからだ。
9時過ぎに奈月が帰ってきた。
前もって「9時頃に帰るよ」とメッセージをもらっていたので、時間通りだ。
帰ってくるなり、
「楽しかったぁ!打ち上げっていいね〜。」
とテンションが高い。
「それは良かったわね。テニス部の子、みんな来てたの?」
「ううん、京香は用事があるって来られなかったんだよ。」
奈月は残念そうに言った。京香ちゃんが来なくてこのテンションだから、来ていたら天元突破しているんじゃないだろうか。
夫はお風呂に入っていたので、私が奈月に唯のことを話した。
奈月は「わかった。聞いてみる。」と言い、2階へ上がっていった。
少し経ってから下りてきた奈月の顔を見て、ダメだったことはすぐにわかった。
奈月がいうには、
「何でもない。今は一人で考えさせて。」の一点張りだそうだ。なんだか真剣な顔で考え込んでいたらしく、そっとしておいた方がいいと思うとのことだ。
そうして、6日目が終わった。
最初のコメントを投稿しよう!