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第二話
「お父さん、やめて!」
唯は私に覆いかぶさりながら叫ぶ。
だけど、夫には火に油を注ぐ結果となってしまった。
「あぁっ!!!お前も俺に逆らうのか?この家の女はクソしかいねぇなァッ!!!」
容赦のない本気の蹴りが唯を襲う。
「ゲェッ…ごほっ…うげぇっ…」
私は無意識のうちに「あなたっ!」と言い、夫を止めようとするが、止めるよりも先に夫の足が私の顔を床に叩きつける方が早かった。足で顔を床に押し付けられながらも私は叫ぶ。
「子供には手を出さないで!!!」
夫は悪びれもせず、
「主人に逆らうガキに躾をしてやってんだよ!!!オラッ!!!」
私の顔から足をどけたかと思うと、更にもう一発、唯の横腹に本気の蹴りを入れる。
「グボッ…オゲェ…やめ…て」
唯が涙ながらに懇願したとき、玄関がガチャッと開いてクラブ活動を終えた次女の『奈月』が帰ってきた。
奈月は私と唯を見て、
「お母さん、唯…」
と、つぶやいたかと思うと、頭に血がのぼったのだろう。みんな思ってはいるが口には絶対出さない禁句を叫んで夫に飛びかかった。
「コノッ!!クソデブハゲじじぃがぁ!!!」
そう、夫の陽一は髪がかなり薄く、体重は確実に100kgは超えている、お腹はいわゆるビール腹で顔もパンパンである。
飛びかかって押し倒そうとしたのだろう。しかし、所詮中学2年の女の子と巨漢の夫とでは相手にならない。夫はびくともせず、夫の表情が怒りから般若に変わる。
「オイッ!このクソバカ女!!!今なんつった!!!しばきたおしたらァッ!!!」
奈月の背中に勢いよくエルボーを立て続けに3発打ち込む。
更にそのまま床に倒れた奈月の背中を足で踏みつける。奈月は声すら出すことができないようだった。
「クソ女どもには躾と教育が必要やなァッ!!!」
私は夫がもう1発踏みつけようとする足に縋りつき、
「申し訳ありません!私が至らないばかりに。お許し下さい……」
と、額を床にこすりつけて土下座をする。
「チッ、しゃぁない!オイ!クソ女ども!3人揃って30分以内に【反省】しに来い!わかったな!!?」
そのまま夫は足音を響かせながらテレビのある部屋へ消えていく。
私は唯と奈月に駆け寄り
「…ごめんね……お母さんのせいで……」
すると、唯も奈月も痛みをこらえながら
「大丈夫、お母さんのせいじゃないよ。」
と言い、3人で悔し涙を流した。
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