空に落ちる 【ユフの方舟3】

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 大エレベータの監督係と話したけど、こんなに自由に情報が与えられる娘たちは私たち、つまりテルジータ父さんの娘たちくらいのものらしい。他の家の娘たちは何をして過ごしているのか聞いてみたけど、何もしていないそうだ。監督係がいうには他の娘たちは監督係とどころか同じ家族の娘と話をすること自体もほとんどないみたい。  私たちテルジータ父さんの娘たちはかなり特殊で、恐らく自由な情報が情動というバグを増加させているのだろうということだった。  自室に戻っていくつかの動画を見た後、最後に一番気に入っているテルジータ父さんのメッセージを聞く。私たちはテルジータ父さんに直接会ったことはない。けれどもテルジータ父さんは確かに私たちの父さんで、私は毎晩優しそうな父さんの声を聞いて眠るのが好き。テルジータ父さんが一度見てみたいと言っていた空と同じ色の瞳が優しそうに笑うのを見るのが好きだった。 ー俺の娘たち。 ー都市での生活は窮屈だろう? でも我慢して欲しい。 ーメンテナンスや治療はやはり地下では難しいんだ。センターから離れると機材の調達が大変でね。 ーバイオロイドの都市でのスーツ着用を義務付けているのは法律なんだ。でもその分みんなには美味しいご飯を用意するようにしておいた。少しでも喜んでくれると嬉しいんだけど。 ー今は人間との接触と姿を晒すことを禁止されているけど、本当は人間は自分たちと同じものが危険な仕事についていることを直視したくないだけなんだよ。だから1人でも無事に仕事から帰ってきて欲しい。 ー君たちの仕事が終わったらみんなで一緒にご飯を食べよう。
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