空に落ちる 【ユフの方舟3】

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 そう思っていると小さなアラートが鳴った。晩ごはんの時間。今日は何かな。  チューブからグーラッシュの味がした。かつてハンガリーという国で作られた料理。牛肉とパプリカを始めとした野菜をトマトで煮込んだ料理。この間調べた。トマトの酸味と野菜の甘味の優しい味が染みていて私の好きな晩ごはん第4位。美味しい。前に映画で見たグーラッシュの形を思い浮かべる。確か赤茶色の料理だったはず。本当は映画と同じように料理を目の前にして食べるということをしてみたい。けれども私たちは都市ではヘルメットとスーツを外すことはできないから直接チューブで食べている。地中で食べる食事は見ながら食べられるけれど、他の家の娘たちと同じ携帯食だから味にバリエーションがないんだよね。でもいろいろなご飯を食べられるのもテルジータ父さんの娘たちだけみたい。  翌朝、大深度地下におりてようやく私たちはヘルメットとスーツを脱いで身軽な姿に戻る。父さんの言うように都市は正直ちょっとだけ窮屈。  地下に降りて最初にすることは今日の仕事の予定の確認。昨日の予定は消化できてる。想定外の硬い岩盤や物質はなかったし。今日はどうかな。予定を確認すると昨日掘った場所から少し直進したところに大きな空洞がある。そこが私の目的地。おそらく今日中にたどり着ける。そこで私は壊れるのかな。そればっかりはよくわからない。
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