空に落ちる 【ユフの方舟3】

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 ずっと穴を掘っている。深い深い穴を。どの程度掘っているのか、それはメートルとかの長さの単位では表示されるけど体感的にどのくらいなのかはもはやよくわからない。  といっても私自身が掘っているわけではない。掘るのはあくまで機械だ。空中に浮かんだ直径20センチほどの球体である『コア』と直径2メートルほどの大きさの円形フレームである『サークル』。コアが地質を判断し、サークルが土に食い込み掘り分け固めてパネルを形成する。崩れないようそのパネルを通路内に壁として貼り付けながら進むシールド工法。灯りと空気を通す配管もサークルが同時に生成して、10メートル毎に緊急時用の隔壁が作られる。  私の役割は点検と確認。この子たちの動作チェックとメンテナンス、それから地質と空気の組成、最終的には人間が生存可能かどうかの調査。私たちはこの3体で1つのユニットだ。  手首のアラートがピピピとなる。少し遠くからも鳴っているのが聞こえる。このあたりの岩盤は音がよく響く。終業の時間だ。現在地と進捗状況を記録してセンターに戻る途中に0129号と落ち合った。 「0156、今日の調子はどう?」 「いつも通り。でも明日は目的地に着けるかも」 「そっか。本当にこの深度にあるのかな、綺麗な場所」 「どうだろうね。なかったらお父さんのプロジェクトは大失敗」 「そうするとどうなるの?」 「きっと私たちは廃棄になるわ」 「廃棄になるとどうなるの?」 「そうねぇ、どうかしら」
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