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1.
「ねぇ、覚えてる?」
ホラーだ。
二十時、アパートのチャイムが鳴って出ると立っていた見知らぬ女の子にいきなりそう言われた。
「ねぇ、覚えてる?」
ホラー以外のなにものでもない。ホラーじゃない要素を挙げるならこの女の子がめっちゃ綺麗だという事くらいか。いや綺麗どころではない。どストライク、俺のタイプど真ん中だ。いや、この状況ではそれだってホラーの要素になる。それとも罠?サスペンスなのか?
女の子は繰り返す。
「覚えてる?」
動揺しながら俺は
「あの・・・会ったことあるっけ?部屋間違えてない?」
そう聞き返すと彼女は困った顔をして下を向いて黙った。彼女をよく見ると髪と着ている白いワンピースが少し濡れていた。先程の通り雨にうたれたのだろう。
し、下着が少し透けている......。
湧き上がる欲望を抑えながら下を向いたままの彼女を観察した。
年齢は俺より少し下の十八歳くらいだろうか。手にはスーツケースを持っている。綺麗な顔立ちだ。大きな瞳に純白の肌、そして柔らかそうな唇。幼さでは隠せない美しさが輝いている。まじでタイプ。胸まであるストレートの黒髪もいい。むむ胸は少し小ぶりか。俺は欲望を抑えるのに必死だ。
彼女は下を向いたまま黙っている。
「タオル貸そうか?」
俺がそう言うと彼女は俺を見て頷いた。
かわいい。
最早ホラーでもサスペンスでもいいからお近づきになりたい。
俺は少しでも印象をよくしたい下心から、タオルは最近お袋が送ってくれたまだ箱に入っていた新品を差し出した。女の子は綺麗な手で濡れた頭、顔、服を拭いた。
そのタオルになりたい。そう思いながら俺はその様子を見ていた。そして、このまま帰したくはないそう思った俺は
「えっとよくわかんないんだけど何か困っているならどこか外で話聞こうか?」
と誘ってみた。その時だった。
嘘のように大雨が降り出したのだ。しぶきが玄関にまで入り込んでくる程の大雨が。
俺と彼女は思わずその雨を見つめた。
この雨の中外に行くのは流石に氣が引ける。
そう氣が引けるからだ。
「よかったらうちに入る?」
俺は恐る恐るそう言った。決してやましい氣持ちはない。・・・ないことはないが、一番は大雨が降り出したからだ。
彼女はまだ雨を見ていた。
「散らかってるんだけど、よかったら」
俺はダメ元で押してみた。
彼女は振り返り
「よろしくお願いします」
と言った。俺は心の中で「いいの?」と思いながら大雨に感謝した。
これ運命?
いやホラーとサスペンスの可能性もまだある。が、チャンスだ。
何の色気もない俺の夜が突然輝きだした。絶対にこのチャンスをものしてやる。そう俺は決意し彼女のスーツケースを持ち、彼女を家に招き入れた。
これがあいつとの「再会」だった
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