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3.
「私の名前は日比野葵です」
同棲の宣告と意味のわからない告白をした後彼女は吹っ切れたように話し始めた。
ひびの あおい、その名前に記憶はない。
「歳は十九歳です。一人っ子です。父は会社を経営しています。よろしくお願いします」
俺は困惑していた。なぜこんなに綺麗な子が俺の家に来て、俺を知っていて、「わたしのことを好きになってください」という逆告白?をしているのか。いくら考えてもわからなかった。
自分で言うのもあれだが俺はイケメンではない。顔は中の中くらいだろう。スポーツ万能でもない。飛び抜けた取り柄もない。身長も男子平均くらいの172cmだ。そんな俺になぜ?
俺は勇気を持って聞いてみた。
「あの日比野さん?えっと本当状況がわからないのだけど、俺が日比野さんを好きになればいいの?」
「そうです・・・」
彼女は赤面しながら答えた。
「それって、あの、俺日比野さんすっごいタイプだからなんならもう好きなんだけど、それでいいのかな?」
彼女は更に顔を赤くした。
「それくらいじゃ足りないです!もっと・・・もっと、心臓をバクバクさせてください!」
可愛すぎた。
心臓をバクバクさせてくださいだ?
なんなら俺の心臓あげますけど?
浮かれるのが追いつかない俺に彼女は続けた。
「でも一番は、『覚えてる?』の答えを......私の心臓に聞かせて欲しいです」
そう言う彼女は胸に手をやり少し悲しい顔をした。
「んーよくわかんないけどわかったよ。俺が日比野さんみたいな綺麗な子の申し出断る理由ないから。今日からよろしくね」
そう俺が言うと彼女は少し安心したようだった。
「やっぱり優しいですね」
「え?やっぱり?」
「な、ななんでもないです!こちらこそよろしくお願いします!」
可愛いすぎだ。こんな子と同棲できるなんて夢のようだ。俺が妄想の世界に入ろうとした時彼女は言った。
「あ、因みに期限は十日でお願いします!」
「え?期限があるの?」
「勿論です。私も学生で生活があるので」
なんじゃそりゃー!!幾つかの妄想が壊れた。
「え?じゃあ俺は十日以内に君を好きになって『覚えてる?』の答え?を見つけないといけないってこと?」
「そういうことですね」
「本当わかんないんだけど、それができなかったら?」
「できなくても、何もないですけど...必ず聞かせてほしいです」
そう言って彼女はまた悲しそうな顔をした。
本当なんなのだこの子は?
俺は俺の妄想の核たる部分について聞いてみた。
「因みに俺が日比野さんを好きになるって事は俺達付き合うって事だよね?」
「それはないですね。私政宗さんタイプじゃないので」
即答も即答だった。
俺はショックでどういう顔をしたら良いのかわからなくなった。俺の全ての妄想は跡形もなく吹き飛んだ。
好きになってくれと頼まれたのに好きになっても付き合えない?なんなのだその半殺しは?その美貌ならなんでも許されると思っているのか?小悪魔め。
「政宗さんは私にドキドキしてくれたらそれでいいのです」
そう言いながら彼女は立ち上がった。
「兎にも角にもまず掃除ですね!このままじゃ私ここに住めませんので!」
そう言って彼女は俺の部屋を片付け始めた。ショックを受けた俺はそれを黙って見ていた。
本当になんなのだ。この小悪魔は。
あいつも初めて俺の部屋に来た時いきなり部屋の掃除をはじめた
あとから思い出したあいつとの思い出だ
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