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7.
「これは星弥のノートだ。なぜ君が持ってるの?」
俺は恥も忘れて、泣きながら聞いた。
星弥の死を知ってから俺は空っぽになった。暫く何もできなかったし、家に閉じこもっていた時期もあった。それもあって俺に高校時代の思い出はほとんどない。星弥の死を受け入れるのには随分と時間がかかった。
そして空っぽになった俺の中には沢山のなぜが生まれた。
「なぜ星弥は死んだのか?」
「なんの為に星弥はアメリカに行ったのか?」
「なぜあいつは元気がなかったのか?」
「なぜ俺は引き止めなかったのか?」
「なぜあいつは最後にあんな事を言ったのか?」
暫く忘れていた沢山のなぜが俺の中で爆発した。
「答えてくれ。なんで君が......」
ずっと聞きたかった。なぜ星弥は死んだのか。誰もそれを教えてくれなかった。俺の半分だったのに。
俺は星弥と別れた日以上に泣いた。
泣く俺を彼女は抱きしめた。
「ごめんなさい。もうやめましょう。やっぱりあなたの中に彼は生きていた」
そう言って彼女も泣いた。
二人とも涙が止まるのに暫く時間が必要だった。
彼女はずっと俺を抱きしめてくれていた。
「話してくれる?」
俺がそう言うと彼女は
「はい。聞いてください」
と言い、上着のボタンを外し始めた。
先程見えた彼女の胸の大きな傷痕が露わになった。
彼女は話始めた。
「星弥さんは病気だったんです。なんの病気かは教えてくれなかったですけど、中学に入った時から自分が死ぬことを知っていたそうです。そして私も生まれながらに心臓に欠陥を抱えていました。誰かの心臓を移植しなければ私は生きられなかったのです。今私が生きているのは星弥さんの心臓のお陰です」
そう言うと彼女はまた泣き出した。俺はずっと知りたかった答えがわかったような氣がした。
「私と星弥さんが初めて会ったのは星弥さんが中学二年の時です。本来、臓器を提供するドナーと受けるレシピエントは接触が禁止されています。しかし、星弥さんは伊野グループの力を使って私に会いにきたのです。あれは紅葉に染まる秋のNYでした」
そう言って彼女は俺の知らない星弥を語り始めた。
「俺の半分」そう呼んでいたあいつの事を俺はどれだけ知っていたのだろうか
彼女から聞くあいつは俺の知らないあいつだった
けれどやっぱりあいつはあいつだった
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