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 「これは星弥のノートだ。なぜ君が持ってるの?」  俺は恥も忘れて、泣きながら聞いた。  星弥の死を知ってから俺は空っぽになった。暫く何もできなかったし、家に閉じこもっていた時期もあった。それもあって俺に高校時代の思い出はほとんどない。星弥の死を受け入れるのには随分と時間がかかった。  そして空っぽになった俺の中には沢山のなぜが生まれた。  「なぜ星弥は死んだのか?」  「なんの為に星弥はアメリカに行ったのか?」  「なぜあいつは元気がなかったのか?」  「なぜ俺は引き止めなかったのか?」  「なぜあいつは最後にあんな事を言ったのか?」  暫く忘れていた沢山のなぜが俺の中で爆発した。    「答えてくれ。なんで君が......」  ずっと聞きたかった。なぜ星弥は死んだのか。誰もそれを教えてくれなかった。俺の半分だったのに。  俺は星弥と別れた日以上に泣いた。  泣く俺を彼女は抱きしめた。  「ごめんなさい。もうやめましょう。やっぱりあなたの中に彼は生きていた」  そう言って彼女も泣いた。  二人とも涙が止まるのに暫く時間が必要だった。  彼女はずっと俺を抱きしめてくれていた。  「話してくれる?」  俺がそう言うと彼女は  「はい。聞いてください」  と言い、上着のボタンを外し始めた。  先程見えた彼女の胸の大きな傷痕が露わになった。  彼女は話始めた。  「星弥さんは病気だったんです。なんの病気かは教えてくれなかったですけど、中学に入った時から自分が死ぬことを知っていたそうです。そして私も生まれながらに心臓に欠陥を抱えていました。誰かの心臓を移植しなければ私は生きられなかったのです。今私が生きているのは星弥さんの心臓のお陰です」  そう言うと彼女はまた泣き出した。俺はずっと知りたかった答えがわかったような氣がした。  「私と星弥さんが初めて会ったのは星弥さんが中学二年の時です。本来、臓器を提供するドナーと受けるレシピエントは接触が禁止されています。しかし、星弥さんは伊野グループの力を使って私に会いにきたのです。あれは紅葉に染まる秋のNYでした」  そう言って彼女は俺の知らない星弥を語り始めた。  「俺の半分」そう呼んでいたあいつの事を俺はどれだけ知っていたのだろうか  彼女から聞くあいつは俺の知らないあいつだった  けれどやっぱりあいつはあいつだった  
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