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 「これが、私があなたを訪ねた理由です。すぐに会いに来れなくて、六年も時間をかけてしまい、すみません」  全てを吐き出し彼女は少し安心したようだった。  俺は俺の知らない、そして知りたかったあいつを知った。そして、色んな考えが巡り暫く真っ白になった。  黙っている俺に彼女はまた泣いて聞いた。  「私はプレゼントになれましたか?星弥さんの、彼の願いを叶えられましたか?」  彼女の辛さが俺に伝わった。この子はずっと苦しかったのだろう。星弥の死の責任を一人抱えていたのだ。彼女が抱える必要はないのに。俺が知らないところで彼女は星弥と生きてきたのだ。  「あいつ、本当勝手な奴でさ」  俺の口が勝手に話し始めた。  「金持ちだからって、イケメンだからって、何でも自分の思い通りになると思ってんだよ。本当勝手だよね。・・・でも、最高だったんだ」  俺は泣いた。すべてを流しきるように。  彼女も泣いていた。俺たちは星弥に泣かされたのだ。  氣がつけば日付けが変わっていた。俺たちは恋人のように肩を寄せあったまま黙って時が経つのをみていた。沢山の星弥が俺の中を流れていった。  「星弥さんの氣持ち驚きましたか?」  唐突に彼女が聞いた。  俺は不思議な自分の心のうちを告白した。  「驚いた。驚いたよ。そんな事思ったことなかったから。でも、あいつのはたぶん俺とは違ったから」  「違ったって?」  「俺はさ。中学の頃ほとんど見た目だけで女の子を好きになって告白してた。それで全て撃沈ね。ま、それは俺に魅力がなかったんだろうけど。ただ、あの頃の俺の好きは軽かった氣がして。今もかもしれないけどね。  ・・・同じ好きでも俺の好きとあいつの好きはたぶん違ったんだと思う。あいつの好きはもっとなんて言うか高尚な氣がする。あいつは本当に俺を見て、考えてくれてたんだと思う。だから、あいつに好きって言われるのは嬉しよ。・・・俺もあいつに惚れてたのかもね」  思えばずっと不思議な奴だった。どこまでも氣楽で一緒にいるだけで落ち着く。無敵にも思えた。  俺の青春の必要最低条件が星弥だ。それ以外はなくても良かった。さすが俺の半分だ。  「でも、あれはないよ」  俺は笑って言った。  「あれって?」  「最初のやつ。『ねぇ、覚えてる?』て。あれ、絶対わかんないから」  「そうですよね」  「確かに、俺が星弥と会った最後の日、あいつは『次会った時一番に俺が生きてるか?って聞くからな』って言ってたけど、わかんないから。俺が鈍いのかもしんないけど。こんなタイプの子が来て、心臓だけ星弥で・・・そんなのわかるわけないよ」  俺はまた泣いた。  あいつは俺を見て笑っている氣がした。    覚えてるって?  覚えてねぇよお前のことなんか  勘違いしてんじゃねぇよ  覚えてるってことは  忘れたことがあるってことだから    お前を忘れたことなんて  俺にはなかった  
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