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 鼻を鳴らして、宣宅と助手が用人たちのほうへ向かった。  その間に、ときは寝床の様子をあらためて見ていた。  ひどいありさまだった。  敷布団に、かいまき、そこに横たわって眠る竹丸。それらの全体を、緑色のカビのようにもわもわしたものが、びっしりと覆っている。  瘴気である。  大人でもこれだけの瘴気にまとわりつかれたら倒れてしまう。まして、竹丸は七歳の子なのである。  早急に片をつけなければならない。  ときは決意をかためると、父に向って言った。 「父上、引き離しが終わりました」 「さようか。やはり、この男か」 「はい。食いつくされております」  ふたりの目が向いているのは、医師の宣宅である。  これから腰をおろそうとした宣宅は、動きを止め、なんのことかと、うろんな顔をした。  ふわっと立ち上がった鬼一郎が、医師に身体を寄せる。そのときの鬼一郎に、殺気はまったくなかった。  ふらり――。  まるで酔っ払いがふらついて倒れこむように、鬼一郎が宣宅に抱きついた。
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