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「宣宅どのは、内側からあやかしに食われてしまったのです」  ことが終わったあと、別室に引き上げてきた鬼一郎は、用人の倉田にそんなふうに説明した。乳母のたえは竹丸につきっきりで、この場には来なかった。  鬼一郎は続ける。 「そうして、宣宅どのを乗っ取ったあやかしは、瘴気を吐きだし、竹丸君(たけまるぎみ)を弱らせていったのです」  倉田は、ふむ、とうなずき、「もうひとつ」と身を乗りだした。  鬼一郎は問う。 「刀につらぬかれて、なんともなかったことでしょうか?」  倉田がうなずくと、鬼一郎はいたずらっ子のようにほほえんだ。 「〈かまいたち〉は、あやかしを斬る妖刀です。この刀、人だけを斬れば、あるいは、あやかしだけを斬れば、普通に斬れます。ところが、人とあやかしの両方を同時に串刺しにしたときは、不思議なことに、あやかしの血だけを吸うのです。人は傷つけない。もっとも、串刺しにされた人の痛みたるや、大変なものなのですが」  先ほど、それを実演して見せた鬼一郎は、もう一度小さく笑うと、出された報酬の金子(きんす)を、ふところにしまったのだった。                                〈了〉
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