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ときは冷ややかな笑みを浮かべて、女に答えた。
「わたくしのほうは、このままでも一向にかまいませぬが。むしろあやかしと戦うとなれば、このほうが動きやすいのです」
それは本心であった。面などつけていては、あやかしと斬り合えぬ。
「さようか……では、好きなように」
中央の女、 たえと名のった乳母が、もう一度小さく頭をさげた。
父の鬼一郎が説明を加えた。
「娘は五年前、あやかしの騒動でやけどをおいました。それ以来、あやかしの気配を感じ、見ることができるようになったのです。それで、あやかし退治の仕事をするときには、つれて歩いております」
鬼一郎の説明に、たえは「なるほど」という顔で、再度ときに目を向けた。今度は顔ではなく、全身を見やる。ときは十七の娘ではあるが、いまは髪を総髪に結い、男物の袴をはいた若武者の姿である。
たえはひとつうなずくと、視線をときから鬼一郎に移す。
「用人の倉田から、あらましの話は聞いたでしょうが、もう一度わたしの口から、これまでのことを話しましょう」
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