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「少しお尋ねしてもよろしいでしょうか?」  話を聞き終わって、鬼一郎が問いかける。名前とはうらはらに、やさしげな顔つきの男である。 「なんなりと」  たえがうなずく。説明するうちに、国元の側室への感情が高ぶったのか、ほほに赤みがさしている。  鬼一郎は続けた。 「あやかしがどうのこうのと言う前に、まず毒を疑わなかったのですか? 毎日食しているものに毒が入れられているのではないか? あるいは、医師が処方している薬に、毒が混じっているのではないか?」 「日々、竹丸君(たけまるぎみ)が食するものには、毒見役がついております。医師の宣宅は、父親の代から草壁家で召し抱えております。まず間違いのない人柄かと」 「失礼ながら申せば、どれほど忠義の者でも、大金を積まれたり、家族を人質にとって脅されれば、若君に毒をもることもありうるのではないでしょうか」 「これっ。口が過ぎるわ」  横あいから、𠮟責の声を飛ばしたのは、用人の倉田(くらた)善右衛門(ぜんえもん)である。 「よい、倉田どの、疑いはもっともです。宣宅どのの処方する薬については、実は別の医者を頼み、検分させました。まったく問題はないとのことです」
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