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「さようですか。失礼いたしました」  たえに頭を下げた鬼一郎が、ときのほうをふりむく。 「――ということらしいが、どうだ、とき、屋敷内にあやかしの気配などするか?」 「はい、向こうのほうから漂ってきております」  ときが片手でその方向を示すと、屋敷の者たちが、「ほお」と声をもらした。やはりそうか、という顔である。つまり、竹丸がその方向にいるのだろう。  ときは続けた。 「わたくしのほうからも、ひとつお尋ねしたいことがございます」 「なんでしょう?」 「あやかしがいた、となったら、わたくしどもはどのようにいたしましょう?」 「どのように、と申されても……それはもちろん、退治してもらえるのでしょう? そのように、和尚から聞いております」 「父もわたくしも、腰のものを取り上げられております。あやかしを退治するには、太刀(たち)を返してもらわねばなりません」  鬼一郎もときも、ふだんから脇差(わきざし)は持たず、太刀(たち)の一本差しである。その太刀を、屋敷に上がるときに取り上げられている。保安上の理由である。
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