ホタルの音色

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「けいは、なにが食べたい?」 「今日は、けいの好きなもの食べに行こう」  夜の道を走る自動車の中で、運転する男性と後部座席に座る女性。彼らは、女性の隣に座る少年を窺う。少年は窓の景色から目を離し、きょとんとした。 「ぼくが食べたいもの?」 「そう。お兄ちゃんの好きなものでもいいわね」  女性の言葉に、少年は目を輝かせた。彼の兄はアイドルでとても忙しく、家族で過ごす時間も少ない。それでも、少年は兄のことが大好きなのだ。 「お兄ちゃんは、なにが食べたいかなぁ」 「仕事が早く終わる予定でこうして迎えに行ってるんだから、自分で聞いてみるといいんじゃないか?」 「うんっ、聞いてみる!ぼくね、久しぶりにお兄ちゃんと話すから、話したいこともいっぱいあるんだ!」 「そうね。ママも楽しみ……」  少年と女性が微笑み合っていると、甲高い音と鈍い音、そして、激しい衝撃が彼らを襲い、少年の意識は暗闇に包まれた。
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