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岩崎けいは、暗闇の中で聞き覚えのある歌声を耳にしていた。それは、いつも楽しそうで彼のいる暗闇を明るくしてくれるような歌声だった。しかし、その歌声は、どこかさみしげでいまにも消え入りそうな弱々しさもあった。
「まるで、ホタルの光みたいだな…。そう思ってるせいかな。暗闇の中で小さな光が見える」
けいは、いつも暗闇の中でホタルを見つけると追いかけるが、いままで追いついたことは一度もなくて途中で見失ってしまう。
「あのホタルは、ぼくを助けに来てくれたんじゃないの?いつになったら、追いつけるの?」
暗闇の中で不安に押しつぶされそうになりながらも、けいはホタルがいつかきっと自分を導いてくれると信じていた。そして、自分が大切ななにかを忘れていることに気づき始めていた。
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