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土曜日の夕方、人気の多いショッピングモール。
わたしと麻美ちゃんを取り巻く世界はとても賑やかで、買い物客の笑い声やBGMなどであふれ返っているはずなのに、わたしたちがいるほんの数メートルほどの空間だけがやけに静かで、わたしは透明のカプセルか何かに閉じ込められてしまったような、奇妙な感覚に陥っていた。
「わたしって影が薄いのかなあ……。だから、わたし、忘れられちゃうんだよね、きっと」
麻美ちゃんはさらにしょんぼりとした声を出した。
「え、影が薄いからって……ちょっと待って!」
わたしが麻美ちゃんの存在そのものを忘れてしまっているとでも言われているみたいだったが、忘れるも何も、昨日もおとといも、ほとんど毎日のように麻美ちゃんとは顔を合わせているわけで、いったいどうしちゃったのだろうと戸惑っているときだった。
「あ、そっか、ゴメン!」
麻美ちゃんは突然、何かを思い出したというような表情になって、両手をパチンと叩いた。
何がどうなっているのかさっぱりわからず、頭を抱えていると、色素の薄い麻美ちゃんの唇が動いた――
「綾香ちゃんって、麻美と同じ高校なんだっけ?」
その言葉を聞いて、わたしはあっと思った。
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