結婚記念日

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結婚記念日

「ねえ、覚えてる?今日は結婚記念日よ。1周年おめでとう」 朝起きると妻が嬉しそうに朝から目覚めのキスをせがんできた。幸せだ。 もちろん結婚記念日を忘れるワケがない。今日は記念の旅行に行くんだ。 妻が作ってくれた味噌汁は格別に美味しい。最高の朝食をいただいて、ゆっくりと旅行に出掛ける。 旅行の行き先は九州。飛行機でお出掛けだ。九州に着くとあちこち観光したはずなのによく覚えていない。飲み過ぎてしまったようだ。妻に申し訳ないと思いながら眠ってしまった。 「ねえ、覚えてる?今日は結婚記念日よ。1周年おめでとう」 朝起きると妻が嬉しそうに目覚めのキスをせがんできた。あれ?自宅に戻っている。それにこれは昨日の朝じゃないか。 妻が作ってくれた味噌汁は格別に美味しい。最高の朝食をいただいて九州の旅行に出発する。 やっぱり飲み過ぎてしまったようで何も覚えていなくて妻に申し訳ないと思いながら眠ってしまった。 「ねえ、覚えてる?今日は結婚記念日よ。1周年おめでとう」 朝目覚めると妻が目覚めのキスをせがんできた。やっぱり旅行に出掛ける前の自宅に戻っている。 そして、妻が作ってくれた格別に美味しい味噌汁で最高の朝食をいただいて旅行に出掛ける。 酔っぱらってしまうのがいけないんだと酒は飲まないようにしたのだが、何も覚えていないまま眠ってしまった。 そして翌朝目覚めるとやはり旅行に出掛ける前の自宅に戻っている。 無限ループ・・永遠に同じ日を繰り返すという事態にハマってしまったようだ。 何度目覚めても妻が「ねえ、覚えてる?今日は結婚記念日よ」とキスをせがんできて、美味しい味噌汁をいただいて旅行に行く日の繰り返しだ。 幸せではあるが、何とかこの無限ループを脱け出さなければと思った。どうすれば脱け出すことができるのかない知恵を絞って考えた。 妻にボクたちは同じ日を繰り返していると話してみたが、寝ぼけちゃってと全く相手にしてもらえなかった。 旅行に行かなければと、急に体調が悪くなったことにして病院に行ってみたが、麻酔が効き過ぎたのか何も覚えていないまま眠ってしまって、翌朝は同じ日を繰り返している。 何か違ったことをしてみたらと思い立って妻がまだ寝ている早朝に起き出して近くのコンビニに行ってみた。 旅行に行く日ぐらいはと朝食を買って妻に作らせないようにしたらどうかと思ったのだ。ついでに新聞も買った。 新聞を開いてみる。翌日の朝刊だ。やった、無限ループから抜け出せたと思ったが、ボクは茫然とした。 新聞には飛行機の墜落事故の記事が大きく掲載されていた。乗客、乗務員は全員死亡とある。それは、ボクと妻が乗った飛行機だった。 そうか、ボクも妻も死んだのか。真実を知って意識が消えていく。そうか、死んだのか・・ 飛行機事故の遺体にしっかりと抱き合って指を絡めた男女の遺体があった。 しっかりとくっついて離すこともできない。 堕ちる時に永遠に一緒にいることを誓い合ってしっかりと抱き合った結婚記念日に旅行に行こうとしていた夫婦の遺体だ。 「ねえ、覚えてる?今日は結婚記念日よ」と妻がキスをせがんできた。 そうか、またこの無限ループに戻ってきてしまったんだ。永遠に一緒にいようねと誓い合った妻との甘い時間。 死を受け入れて妻と一緒に闇に消えるか、この無限ループを繰り返すか。 妻との甘い時間が永遠に繰り返されるならこの無限ループの方がいいかな。 ※これはもう半世紀も前の物語である。つまりこの夫婦はもう半世紀も無限ループに生きている。これからも永遠に続くのであろう。
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