僕線上の季節 

1/1
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ

僕線上の季節 

濡れた路上を走る車の音が 途絶える事のない部屋の中、 郊外に位置する父の建てた家が、 今も僕の憩い場所だ。 この雨が止む頃はもう秋で、 冷え始める外へ出かけていかなきゃ。 子供ながらに見てた父の背中は 今も変わらず大きくて 幼い僕を奮い立たす、 冬の寒さに耐える位の力と気力は ついたつもりなんだ。 暖かな春の想い出と夏の日々の、 情熱を忘れずに歩いてゆくよこれから 僕線上の季節は流れてく。 日に日に陽は低く 休日の丘の上には寒々とした風が吹く。 温かい眼差しのあの子の元へ 車に乗り込み走らせる。 この冬をあの子と共に越えて  暖かい春を築いていきたい。 己の弱さを知りつつ明るめの色で染めた日々、 激しく照らす陽はもう遠く。 冬の季節がこの先何処まで続くのか考えず 甘えと驕りの季節は想い出の中へ、 苦しい毎日だけど春の日の家族の為に、 僕線上の新たな季節の為に…。 今 窓を開け 外の空気を感じる。 季節は 否が応でも 移り変わる それが自然の摂理だから 街中に足を運べば 駆り立てられてるだけだと、 人として歩んでゆく  陽射しを求めるならば…。 喜びの形が少しづつ音をたてて変わってゆく、 当たり前の日々が、幸せの意味だった事や。 春に咲く花も夏の青い空も秋の木枯らしも、 あの日の僕が感じてきたものすべて 僕自身と供にコートに包み込んで、 僕線上の季節が移りかわるまで…。 僕線上の季節は流れてゆく。 2000
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!