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「ん、鈴音? どしたの?」
「あ、ううん、何でも。大丈夫。……けど今日はもう帰るね。なんか映画っていう気分じゃなくなっちゃった。ごめんね、またね」
挨拶もそこそこに席を立ち、店を出た。
物悲しさはなかった。当然か。
呆れ果て、何もかもいやになって、ヤツの前から消えてやったのだ。
番号やアドレス、仕事場も変え、引っ越しまでした。
悲しくはない。ヤツに対して未練なんてこれっっっぽっちもない。
怒りは……こうしてまだ度々顔を覗かせはするけれど。
なんだろう?
虚しい、という感じが一番しっくりくるのかもしれない。
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