少女Aの遺書

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元々自己肯定感は異常なほど低かった。顔は良くて下の中。面白い話も、気の利いたことも出来ない。運動は駄目だし、頭もさほどよくない。 でも、生まれ育った環境で、頭のいい人がいた。ピアノを弾ける人がいた。サッカーが得意な人がいた。みんなみんな何かをしているのに、私だけ何もなかった。私の存在証明に成り得るものが、なかった。ずっと空っぽだったの。ただ吸い込んで吐いた空気ですら、息苦しい。 その上、家族は多かったもんだから、両親からの愛情も感じにくかった。学校で虐められてたことなんて、親には話せなかった。妹も弟も小さかったし、迷惑はかけられなかったから。大きくなるにつれ、兄弟への劣等感が大きくなっていたの。どうして妹は可愛いのに、どうして兄は親孝行なのに。私だけ、何となく優先順位が低いように感じていました。そんなわけないと、頭ではわかっていたはずなのに、全身が愛情を求めていた。ありえないほど愛情に飢えていた。多分相当なメンヘラだったんだと思う。 彼氏は欲しかったけど、つくるのが怖かった。だって、私がどんなに彼氏を愛しても、彼氏が同じだけの愛情を返してくれるとは限らないもの。私は、自分のことを縛って、だれにも見つからないよう、深い森の中に、私を閉じ込めてほしかった。そうすることでしか、彼氏からの愛情を感じることが出来なかったの。でもいつか、私のことがうっとおしくなって、いやになって、嫌いになる日が来る。想像するだけで怖かった。友人だって同じ、私以外の友達なんて作らないでほしい。私を一番にしてほしい。でも、そんなことを言えば、嫌われる。その事実が何より辛い。もしかしたら、愛した人間に嫌われることより怖いことなんて無いのかも。 自分でも気持ち悪いと自覚しているけど、私は相当歪んでる。両親を苦しめてやりたかった。泣かせたかった。私に縋ってほしかった。私がグレて、変な集団とつるんで、不順性行為に走れば、親は自分の育て方が悪かったと反省するだろうか。お金の為に、パパ活やら風俗をすれば、もっと愛してあげれば良かったと泣いてくれるだろうか。私が死んで、この遺書を読んで一生消えない十字架を背負って生きてくれるんだろうか。何より、私はそれで満足できるんだろうか。 ううん、たぶんきっと満足できない。どんどんどんどん枯渇して負のスパイラルにハマって、愛情に溺れていってしまうと思う。今は10の愛情で満足していても、いずれ100の愛情が欲しくなって、1000の愛情が欲しくなってしまうの。
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