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「儀式に先立ち、けちんぼな神官より倹約せよとのお達しですから、せめてもの餞贐(はなむけ)に、いつもより多く飾らせていただいた次第ですわ」 「大道芸じゃないんですから」 「一生に一度の晴れ舞台に、色物の衣装も駄目、髪結いも駄目だなんて、あんまりです!」 「己家の娘は(びゃく)()を身にまとうのが、いにしえからのならわしなのですよ」  少し調子を張って諭せば、ようやっと反論が止む。  ただ、やたら唇を往復する指の感触から察するに、塗り重ねる紅の量で訴える方向性へ移行したらしかった。本当に明鈴は、負けず嫌いで、世話焼きだ。 「さぁ、準備が整いましてございます。お綺麗ですよ、瑶佳様」 「ふふ、ありがとう」  照れるものは仕様がない。はにかみ返しながら椅子から立ち上がったところで、頃合いを見計らったかのように、新たな足音あり。
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