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「姉上、(さい)()です。お迎えに上がりました」 「中へどうぞ」 「失礼いたしま……あ、姉上っ!?」  扉の開く音、次いで困惑をにじませた声は、慣れ親しんだ弟のものに相違はなかろうが。 「どうしたのです、急に黙り込むなんて」 「いえ、何と言いましょうか……」  要領を得ない返事だ。いや、そもそもこの子が、十四という歳のわりに聡明すぎるのか。  何にせよ、真っ先にしびれを切らしたのは、明鈴だった。 「僭越ながら、儀式の刻限が迫っております。姉君は目がお見えになられないのですから、御身がしかとお護りくださいませ」 「言われずともわかっている。参りましょう、姉上!」  ひったくるように瑶佳の右手をさらって踏み出した崔牙であったが、姉が足をもつれさせているのをはたと認めると、肩を支え、ばつが悪そうに歩調をゆるめた。
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