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「薬草採りに、夢中になりすぎたのかな。友達が病弱だから、滋養のあるものを食べさせてあげようと思ったんです」
「自分の病を、治すためではなかったのか」
「わたしはいいんです」
まぶたを閉じたまま、頬笑んでみせる。
膝をなでる〝指〟が、動きを止めた。
「怖がらないのだな」
「はい。とても親切な妖魔さんとお会いしたので」
「のんきなやつ」
「わぁ、ありがとうございます!」
「……褒めたつもりはないのだが」
膝をなでる感触が、ふと離れゆく。
かと思えば、突然のことで狼狽する手を、ぐいと引っ張られる。
「羆は心外だ」
「え? あっ……!」
とたん、熱湯をかぶったみたいに顔が熱くなった。口には出していないつもりだったのに。
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