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「ごごご、ごめんなさい! わっ、悪気はなかったんです!」 「なら、黙ってさわれ」 「はい! わかり……はぃいっ!?」  トウテツに導かれ、指先がふれたのは、想像よりやわらかいモノ。自分の肌、とりわけ頬とよく似た感触を持つモノ。  続いてまぶた、額、鼻。  手の平をかすめた絹糸のようなモノは、髪。 「ええぇええっ!?」  腕や指だけではない。触れるモノすべてが、自分と同じ人間のモノだった。  びっくり仰天して抜けそうになる腰を、正真正銘の〝腕〟が支えた。 「だってトウテツは妖魔で、妖魔は色んな動物が混ざった姿をしててっ!」 「俺は妖力を封印されてから数百年間、ずっとこの姿だ」 「あ……」  うなだれそうになり、暗い気分を振り払うよう声をあげる。
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