3人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
三年の月日が流れ、十六歳を目前に迎えた春。
今日も今日とて、瑶佳は意気揚々と獣道を登る。
つと、道標にしていた旋律が途切れた。不思議に思って歩みを止めると、そばでそよ風が駆け抜ける。
「こんにちは、透夜。今日もいいお天気ですね」
両肩に回された腕にそっと手を添え、笑いかけた。
「あぁ、満天の星だ。……もう真夜中だぞ。身体をこんなに冷やして……」
「暖めてくれていたんですか? てっきり、甘えたくて抱きついてきたのかと」
「瑶佳、これ以上俺を怒らせないでくれ」
怒るというより、心配のあまり、泣きそうな声音だけれど。
自分にとって、昼も夜も同じだというのに。つくづく心配症である。透き通る夜という名を贈ってから、特に。
最初のコメントを投稿しよう!