青春の頃

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和気あいあいと夕飯を済ませて、四人で火を囲みおしゃべりをするが、スマホもなく本も読めなければ暇を持て余す。 「今、何時なんだろ? 月もないし、曇ってるし雨でも降るのかな?」  高橋が不安そうに呟く。もちろん時計の持ち込みもNGだ。船橋は徹底しており、ここまで来るには友人の車で送ってもらい、その迎えは明日の夕方に来る。時間が分からなければ時間の流れも分からないのだ。 「そうやってすぐに時間を気にするのよくないよ! わざわざ原始的なキャンプしてるのに!」  と船橋が叫んだとき、ポツリと雨音がした。それを皮切りにザアザアと雨が降り出す。 「これだと冷えるな。テントに入ろう。寝袋に入れば少しは温かいさ」  高木が冷静に判断して、全員テントに入り、さらに寝袋に入るが、眠くはない。 「なぁ怖い話しようぜ」  外は曇り。火も消した。ただの暗闇の中で船橋はそう提案をする。 「せっかくの暗闇に雨にキャンプだ。怪談なんて最高じゃん」 「じゃ、私から」  何気に高橋は乗り気で話し始める。 「降霊術って知ってる? 昔聞いた話なんだけど、ある手順を踏むとねかける相手の背後霊が相手の手を持ち上げるって話なんだけど、それね、途中で止めないと相手の手は首まで動いてね、首を締めて殺しちゃうんだって。本当かどうかは知らないけどね」  しんと静まり返る。船橋の背も高木の背も少し寒く感じた。 「じゃあ次、俺ね」  船橋が語りだす。 「俺の友人の話なんだけどさ、そいつの故郷には古寺があって、そこは立ち入り禁止なんだって。でも、そいつはよくそこで遊んでいたらしいんだ。まぁ境内でね。ずっと寺の中には入らなかったんだって。ある時、仲間の一人が中見てみようってなって扉を開けたんだってさ。そしたら『死ぬか』って聞こえてきたんだってさ。そいつらは怖くなって逃げたんだってさ。次の日、また境内で遊んだら一人怪我して、次の日また怪我したんだって。怖くなってそいつら、そこで遊ぶのやめたらしいんだけど、何日かあとに夜寝ているときに耳元で『死ぬか』って聞こえて、そいつはごめんなさい! って叫んでから何にもなくなったってさ」
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