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「ねぇ、覚えてるよね?」
声が聞こえる。僕は目を覚ました。
(ん?なにかおかしい…)
そこは見覚えのない部屋だった。天井も壁もすべて白い。窓もなければドアもない。ただ白い。誰かがいる気配もない。
「覚えてるよね?」
どこからか声が聞こえる。
「忘れるわけないよね?」
加工されてるのか機械みたいな声だ。
「あなたが犯したあの罪を」
(は?)
意味がわからなかった。罪?僕は何もしていない。というか、最近ほぼ家を出ていない。いや、決してニートじゃないよ?自宅警備員だよ?
「私は聞いてるの。覚えてるの?覚えてないの?」
はっきり言ってわからなかった。迷ったが、
「覚えてません」
と答えた。敬語でいいのかわからなかったが、なんとなく敬語にした。
「まぁ、そうね。じゃあ、今から言う質問に素直に答えて。嘘をつけば…」
怖い…。彼は笑っている。笑い方的には女性だろうか?最後の方は笑い声で聞こえなかったが、まぁ嘘つかなければいいことはわかる。
「あなたはなぜ裏切ったの?」
裏切った記憶などない。というか、人と話すことがまずない。
仕方ないので
「わかりません。」
と答えた。
「はぁ、じゃあなんで私は捨てられたの?」
「わかりません。」
「私ね。許せないの。裏切ったあなたのことが。」
何を言ってるのかわからない。
「覚えてないの?あなた、私をおいて出ていったでしょう?それも、産まな きゃよかった。なんて言って。私だってあんたのとこに生まれてなんか来たくなかったよ。」
…僕はすべてを思い出した。バレないように私って喋ったのも、声を加工したりしたのも。僕はあの日、母さんに捨てられた。許せなかった。だから僕は母さんの家にこれを仕掛けた。そして、母さんが忘れた頃に起動するように…。けど母さんは亡くなった。だからこの家に住むことになった。金が無かったんだ。そして今、見事に仕掛けが起動した。全てを悟った僕が言うことは一つ…
「僕だって母さんのとこになんか生まれてきたくなかった」
けどすべてプログラムされている。このあとのことはもうわかっている。
−覚悟がついた−
「さようなら」
あの日の僕と重なる。あの日のことを考えながら僕は目をつむった。
声の主は「僕だった」
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