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弱きを知る。弱く在ること。
強き者。力ある者は、その心の如何なるに関わらず他者を傷つけ貶めてしまう。そして存在そのものすらも消し去ってしまい、心優しき強き者は涙するばかりである。
弱き者。愚鈍で非才で無能。他者が無くては存在できず、惨めにも首を垂れなければ、己の存在の承認を受けることができない。
このどちらを選ぶだろか? 例えば命さえも危うい戦乱の時代においては、強きを求める者がいなければ、滅びしか待ってはいない。そうして、この世における闘いの歴史は刻まれてきた。
その強き者達の願いは、弱くある者の生を保つことである。その解りやすい例が自らの子。いや全ての子供達である。そして、男なら女を、女なら男をその対象に含めたかもしれない。
そうして守られて来た弱き者は何をすべきか? それは交渉である。よくヒーローが世界を守った後に、誹りを受ける物語が存在し、歴史にも刻まれているが、それは他者を傷つけ貶めた当然の報いであり、そうあることで、弱さを獲得することが許される。
愚鈍で非才で無能となり、そこから始まるのだ。真の闘いは。愚鈍で非才で無能なる者でも生きられる世界の構築。その者がこの世に在っていいとする価値の証明。世界からの承認。これを達成すれば、望めるだろう? 愚鈍で非才で無能な身であろうと己の子を。
絶望の海の淵にある景色とはこのようなものだ。
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