心の渇き

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心の渇き

 絶望の海に在る者は全てを一人で完結することができる。心の渇きとて同様に満たすことはできよう。そのため満足してしまう。仙人の境地だ。しかし、ここに漂っているだけでは法は知れても、多くの意志ある世界。現実と幻想を繋ぐことはできない。  絶望の海は誰にも存在し、その他者の絶望の海を覗き、覗かれることを行うのは、幻想を現実に繋ぐための過程だ。唯一人の相手。それに裏切られようと構わない。己の絶望の海を見てくれただけで、その人にも己の想いが宿るからだ。当然にして、己にも唯一人の相手の想いが宿る。  これを繰り返すことで、現実と幻想は繋がる。まるで子を成すための手順のようだ。  
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