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むかしむかし、砂漠の国の王様が天まで届く砂時計を作りました。 最初に砂を固めて三本の柱を作らせました。 次に大きなガラスの器をふたつ作らせました。 上の器にはたくさんの砂を詰め、下の器は空っぽです。 ふたつのガラスの器を細い管でつなぐと、砂は上から下へと少しずつ落ち始めました。この細い管はオリフィスと呼ばれています。 王様は砂時計に三人の番人を置きました。 上の器の番人は未来といいます。 下の器の番人は過去といいます。 そしてオリフィスを通る砂の番人は現在といいます。 それぞれの番人は砂が上の器から下の器にとどこおりなく流れ落ちていくのを見守る役目を与えられました。 未来の番人がいいました。 「砂は過去へ落ちるばかりだ。わたしもいずれ過去に落ちるだろう」 過去の番人がいいました。 「ふりつもるばかりの砂で、いずれわたしは埋もれてしまうだろう」 現在の番人がいいました。 「すべての砂はわたしの目の前をただ落ちていく。わたしにこの砂を止めるすべはない」 人々は天まで届くその砂時計を見上げていいました。 「いったいこの砂時計は何年の時をはかろうとしているのか」 「この砂時計を作った王様はとうにお亡くなりになった。わたしもこの砂が落ちきるまでは生きていまい」 「いずれ砂はすべて下に落ちてしまうだろう」 「それはこの星の氷がすべて溶ける時かい」 「太陽が燃え尽きる時かい」 「この世のすべてが終わる時かい」 「そうしたらまた誰かがこの砂時計をひっくり返すのかい」 「そんな日は来ないさ。天地がひっくり返らない限りね」
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