記憶④

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記憶④

 真っ直ぐな目で見つめる永人に申し訳なく、俯いた。  「そこら辺が曖昧で……。大事な話してくれたのに、ごめんな。それを話すために、誘ってくれたんだろう?」  自分のことしか考えられなかった昨日の自分を殴ってやりたい。 永人は、下を向いたまま動かない。  しばらく沈黙が続いた。  先に口を開いたのは、永人だった。  「俺も、酒の場で言う話じゃなかったから、気にしないで」  下を向いたまま消えそうな声で言った。  「いや、そうは、いかない。酔っていた上に覚えていないなんて、最低な言い訳だけど、教えて欲しい、って今聞く話じゃないか。ごめん……」  ずっと一点を見つめていた永人が、いまにも泣きそうな顔で俺を見た。  「優しいよね、純斗は」  「優しいも何も、俺が悪い訳だし」  軽く微笑んでいるが、悲しい目をしていた。 その姿に、心底昨日の自分を後悔した。  「昨日言った大事な話って言うのは……、純斗のことが好きだってこと」  俺は、永人の目を離すことができなかった。  「聞いてる?」  じっと固まったままの俺に、永人がもう一度言った。  「好きなんだ、純斗が」  「えっと……それは、メンバーとして好きって事だよね?」  いつになく真剣で、真っ直ぐな目……確信した。  メンバーとしてではなく、“恋愛感情”で俺のことが好きなんだと。
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