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あなたとの出会い
私達の出会いは、まだお互いに高校生の頃だった。
当時、いや小さい頃からずっと、友達と輪に入って遊ぶことが苦手だった私は、常に1人でいるような子だった。人と一緒にいても、どうしても疎外感の様なものを感じてしまい、上手く溶け込む事が出来なかったのだ。
それは高校でも例外ではなく、入学して早々に、教室より図書室に通いつめるようになっていた。
特別本が好きという訳ではなかった。ただ図書室はいつも人がいなくて、1人になるには絶好の場所だった。
あなたと出会ったのは図書室に通うようになってから、少ししてからのことだ。私が通い始めてしばらくして、あなたも図書室に来るようになった。
始めは私1人の場所に侵入して来た不届き者として警戒していた。ただあなたは、そんな私を気にすることなく1人の時間を楽しんでいた。
初めは警戒していた私も、次第に警戒心が溶けていき、気がつけばあなたを目で追うようになっていた。
あなたはそんな私に気が付くこともなく、1人の世界を満喫していた。時に本を読み、時にスキットルに入れた飲み物を片手に外をぼんやりと眺めたり、とにかく孤独を楽しんでいるように見えた。
次第にあなたのことが気になってきた。ただ自分からは話しかけることはしないで気が付けば1年の歳月が経とうとしていた。
もうじき学年も変わろうとする3月。私たちは相変わらず、図書室に通い詰める生活を繰り返していた。
その日は互いに本を読む気分だったのか、2人とも本棚で読みたいものがないかを探していた。互いに本を探しながら徐々に距離が近づいていく。
本を探したいのに、彼が近づくにつれ鼓動が高鳴り、本選びに集中することが出来ない。この高鳴りに耐え切れず適当に本を取ったら、偶然にも彼と同じ本を手に取ってしまった。
こんなドラマみたいなこと有り得るのかと、頭でツッコミを入れて、その後頭が真っ白になる。謝らなくてはと思ったが、上手く口が回らない。
「ごめんね、急に触って驚かせちゃったね」
初めて彼の声を聞いた。想像した通りの優しい声をしていて、いつまでを聞いていたい声音をしている。ただその優しさの中に、すぐにでも消えてしまいそうな儚さがあるような気がした。
「いつもここに来ているよね? もし良かったら一緒に本でも読もうか」
これがきっかけで彼と話すようになった。きっとこの時の私は、とんでもないリアクションをしていただろう。
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