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あなたの世界観
あの日から、図書室であなたに会えば決まって隣の席に座るようになった。お互い毎日図書室に通っているので、結果として毎日一緒にいるようになった。
一緒に使っている席は図書室の奥にあり、本棚のお陰か奥まで来ないと見えない死角になっていた。この2人しか入れない空間に私は毎日ドキドキしていた。
もちろん一緒にいるからと言って、何か特別なことが起きた訳ではない。互いにぼんやりとしている日もあれば、本を読む日もあった。それでも時折、彼と小声で語り合うことがあった。
彼はいつもこの世界の生きにくさを優しい声で語っていた。彼も私と同様で、周りの人と折り合いをつける事が出来ず、孤独でいることを選んだらしい。
私はこれだけ端正で優しい人でも、苦労があるのだなという見当違いな事しか考えていなかった。
正直なところ、彼の儚い声から語られる世界の生きづらさは、あまりにも幻想的で一種の物語のように思えてしまったのだ。彼は本心で語っているのかもしれないが、それはどこか遠い世界の夢物語のような魅力に溢れていた。
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