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オープンキャンパスの時に訪れた際は、光り輝いていた建物も入学して1年経った今では、
当初抱いていた高揚感もすっかり無くなっていた。
何故あんなにはしゃいでいたのだろうと、疑問に思ってしまうほどだ。
一人暮らしを始めたのもあるだろうが、まだ答えを見つけられずにいた。
「おはよう、緑沙!」
「ん、奏汰もおはよう。」
萎れた花が一瞬で綺麗な状態に戻りそうな声を響かせ、友人が此方にやって来た。
陰を知らなそうな純粋な笑みを浮かべる友人の名前は卯月 奏汰。
焦茶色の髪の寝癖をそのままに、耳に掛かる髪の毛をピンで留めた彼は俗に言うイケメンだ。
派手な髪色や人間の色をしていないカラーコンタクトを付けた陽キャが多い中、奏汰は瞳でさえも焦茶色のままで、ありのままの自分って感じだ。
同じ学科を受けた事による繋がりで大学で初めて出来た友人である。
そこそこ有名な美術大学で、グラフィックデザインやCG、アニメーションの制作に興味を持っていた僕は直ぐにここに通う事に決めたのだが、奏汰は知識が豊富でよくやり方を教えてもらっていたりもする。
「そういえば今日、サークルの部屋の除霊頼んであるんだけど緑沙も見に来る?」
「え、何……僕の話信じてたの?」
「んなのあたり前だろ!
オカルトサークルなのにそういう話を信じないのは有り得ないし、第一、嘘ついてるような目じゃなかったからな。
あと少しだけ霊感持ってるらしい工芸科の先輩が何かの気配がするわっ!(裏声)って言って部屋中の写真撮りまくってたし……」
「ふはっ。奏汰女子のモノマネ上手いね」
「へへっ、そうだろ〜。
お前、浮かない顔してたから元気になったようで良かったよ」
「………うん。おかげさまで」
それと同時に気持ち悪い幽霊の姿を思い出し、
吐き気がした。
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