47人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしたの? 今日帰るの早くない? 」
蓮君が私を出迎えてくれた。
もうルーティン化してる感じだけど、いつも、彼が無事家にいてくれていることにほっとする。
存在が確認できた瞬間、学校であった嫌なことなんて、すぐに忘れてしまうんだ。
それにしても、蓮君の表情は、日に日に穏やかになってきている。
覇気のなかった灰色の瞳には、光が宿りはじめて、まるで天気雨みたいな目だって思った。
「うん、ちょっと体調が悪くて」
「え! 大丈夫? もしかして、また何かされた?」
「ううん。……大丈夫だよ。昨日中々眠れなくて、寝不足なだけ」
少しだけ、嘘をついてしまった。
蓮君は、物思わしげに私を見つめた後、「これ飲んだら寝ときな」と言ってラベンダーティーを淹れてくれた。
「ありがと……。なんか、私と蓮君、逆転したね」
クスリと笑ってハーブティーを啜ると、心地いい香と共に、疲れた体と心がほぐれていった。
「そうかな。紫音も淹れてくれるじゃん」
「ん。そうだけど……。なんか、蓮君のほうが頻度多い気がするし、蓮君が淹れてくれるお茶のほうがおいしい」
「ベタ褒めじゃん」
「本当のことだよ」
大雑把な私と違って蓮君は几帳面だから、お茶もきっと絶妙なタイミングと分量で淹れているんだろう。だから美味しいんだ、きっと。
「これ、ラベンダー?俺すごい好きな匂い」
「そうだよ。ラベンダー。私も大好き。あ、そういえばこの匂いの入浴剤もあるよ? 今日お風呂に入れる?」
「マジか。やった! 入りたい」
「じゃあ後で洗面台に置いておくね」
「紫音も一緒に入ってくれんの?」
「え、え? それは無理だよ!あ、でもお互い水着着たらいけるかも」
「冗談だって、すぐに間に受けるんだから」
「………」
蓮君は、笑いながら私の頭をわしゃわしゃと撫でた。蓮君、私をからかっている時楽しそうだけど、私ってそんなにいじめがいがあるのかな。
嫌な気分はあまりしないし、頭撫でられるのすごく嬉しいから別にいいんだけどさ。
蓮君は体を揺らしながら、ハーブティーのおかわりに行った。
入浴剤、確かあったはずだと思うけど、記憶違いだったらどうしよう。
その時は謝ったらいいか。
最初のコメントを投稿しよう!