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 「どうしたの? 今日帰るの早くない? 」  蓮君が私を出迎えてくれた。  もうルーティン化してる感じだけど、いつも、彼が無事家にいてくれていることにほっとする。  存在が確認できた瞬間、学校であった嫌なことなんて、すぐに忘れてしまうんだ。  それにしても、蓮君の表情は、日に日に穏やかになってきている。  覇気のなかった灰色の瞳には、光が宿りはじめて、まるで天気雨みたいな目だって思った。  「うん、ちょっと体調が悪くて」  「え! 大丈夫? もしかして、また何かされた?」  「ううん。……大丈夫だよ。昨日中々眠れなくて、寝不足なだけ」  少しだけ、嘘をついてしまった。  蓮君は、物思わしげに私を見つめた後、「これ飲んだら寝ときな」と言ってラベンダーティーを淹れてくれた。  「ありがと……。なんか、私と蓮君、逆転したね」  クスリと笑ってハーブティーを啜ると、心地いい香と共に、疲れた体と心がほぐれていった。  「そうかな。紫音も淹れてくれるじゃん」  「ん。そうだけど……。なんか、蓮君のほうが頻度多い気がするし、蓮君が淹れてくれるお茶のほうがおいしい」  「ベタ褒めじゃん」  「本当のことだよ」  大雑把な私と違って蓮君は几帳面だから、お茶もきっと絶妙なタイミングと分量で淹れているんだろう。だから美味しいんだ、きっと。  「これ、ラベンダー?俺すごい好きな匂い」  「そうだよ。ラベンダー。私も大好き。あ、そういえばこの匂いの入浴剤もあるよ? 今日お風呂に入れる?」  「マジか。やった! 入りたい」  「じゃあ後で洗面台に置いておくね」  「紫音も一緒に入ってくれんの?」  「え、え? それは無理だよ!あ、でもお互い水着着たらいけるかも」  「冗談だって、すぐに間に受けるんだから」  「………」    蓮君は、笑いながら私の頭をわしゃわしゃと撫でた。蓮君、私をからかっている時楽しそうだけど、私ってそんなにいじめがいがあるのかな。  嫌な気分はあまりしないし、頭撫でられるのすごく嬉しいから別にいいんだけどさ。  蓮君は体を揺らしながら、ハーブティーのおかわりに行った。  入浴剤、確かあったはずだと思うけど、記憶違いだったらどうしよう。  その時は謝ったらいいか。    
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