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「入浴剤いっぱいあったよ。ラベンダーと、ローズと、ヒノキと、森の香りとか」
脱衣所の棚を漁っていると、買ったり、もらったりして溜まっていった、たくさんの入浴剤が出てきた。
「……森?」
「うん。森。って書いてある。森の匂いとか、謎だよね」
「どれもよさそうだけど、せっかくだし、さっき言ってたラベンダーにするよ。それにしても、入浴剤とか入れて風呂入ったことってほとんどないな。今のはこんな形してるんだ。俺、いっぱい入った粉みたいなやつしか見たことない」
蓮君は、透き通ったゼリーのような入浴剤を指で摘むと、電気にかざしながら珍しいそうに見ていた。
「他にもバスボムっていってもっと大きくて、粉を固めた感じの砂糖菓子みたいな入浴剤もあるんだけど、私はカプセルゼリーみたいなやつのほうが、宝石みたいで好き」
「へぇー。色々あるんだな。全部入れたら面白そうだけど」
「……。ん、それはやめて」
脱衣所で二人、入浴剤の話で盛り上がっていると、ブーッとインターホンのベルの音が鳴って、一瞬、心臓が止まりそうになった。
見開いた目を蓮君と合わせた後、急いでインターホン画面を覗き、誰が来たのか確認した。
やばい。先生だ。
私は慌てて脱衣所に戻り、蓮くんに伝える?
「蓮君、どうしよう。先生が来た!一応二階に隠れて」
「わ、わかった」
蓮君は忍び足で階段を上ると、二階の自分が使っている部屋へ入っていった。
大丈夫。普通にしてたらきっとバレない。
私は二人分のコップを流しへ持っていき、蓮君の靴をシューズボックスに隠した後、何もなかったような顔を作って先生を出迎えた。
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