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「あ、木谷。突然来て悪かったな。ちょうどこっちの方面に用事があったから少し様子を見させてもらおうと思って。その、早退したって聞いたから。体調大丈夫か?」
先生は気まずそうな顔で言った後、私の家の周囲を見渡していた。
気にかけてくれていたから、電話か訪問はいずれ予想していたけど、まさか今日来るとは思わなかった。
「全然大丈夫です。忙しいのに、わざわざすみません」
私は深々と頭を下げた。
何も問題のない、いい子だと思われるように。
「あ、いやいや」
このまま家に入らずに、帰ってくれたらいいのにと思うけど、挙動不審で、まだ何か言いたそうにしているし、そうはいかなさそうだな。
「家の人は、誰もいないのか?」
「はい。仕事なんで、今はいません」
「そうか。帰ってくるのは夜遅いのか?」
「だいたい、遅いです」
「そうかそうか」
先生、笑顔下手くそだな。
目を細めて笑っていても、私に聞きたいことがあるって、瞳の奥に書いてある。
「先生やっぱり、おまえに話したいことがあるんだ。ここでいいから少し話さないか?」
「ここで、いいんですか?」
「あ、体調よくないんだったな。中まで入らない。玄関先でいいから貸してくれ。座って話そう。長くはならないようにする」
「わかりました。どうぞ」
ニコリと笑って先生を玄関まで招き入れたけど、蓮君の形跡を玄関周囲に残していないか、内心不安だった。
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