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「間違っていたら申し訳ないけど、木谷、いじめられてないか?」
「………」
先生は、玄関先に腰を下ろすやいなや、私にいじめの話を持ちかけた。
やっぱり気付いていたんだ。
「……。いじめられてます」
「そうか……」
先生は、やっぱりと言って頭を抱える。
いじめがあったら、先生側も絶対大変なんだろうな。
めんどうごとを起こして、すみません。
「いつから?」
「いじめは最近です。しばらく私はターゲットじゃなかったので」
私は、自分の膝に視線を落としながら答えた。
「つい最近まで、ターゲットが他にいたのか?」
先生は、詰めて聞いてくる。
そりゃそうだよね。首を突っ込んでしまった以上、なんとかしなければいけないもの。
「あ、嫌がらせとかはされてないと思いますが、鈴原さんが……」
「ああ。そうか。鈴原か……。あいつはあいつで大変だからな」
「え? 鈴原さん、何かあったんですか?」
鈴原さんの名前が出た瞬間、私は一気に顔を上げた。
その状況に、先生は目を瞬せたあと、眉を下げて口を開いた。
「ああー……。それはな。誰にも言うなって言われてるから、すまない」
「秘密なら、言わなくて大丈夫です。ただ、元気でいてくれたらいいな……と」
本当のことだった。
いきなり態度を変えて、理由も言わずにいなくなった時は少し腹が立ったけど、きっと何か理由があったんだって信じたい。
「優しいな。おまえは。だけど、おまえは自分の心配しろよ」
先生は私の頭にそっと手を置いたと思ったら、急に顔つきを変えた。
「柏木が主犯だろ?」
それも、わかってたんだ。
「………」
「先生、ちゃんと気を張って見とくようにするから、せっかくしっかり単位取ってるんだし、もったいないから学校は来てくれな」
「……先生。ありがとうございます」
「木谷こそ、話してくれて、ありがとう」
私は大きく首を横に振った。
僅かだけど、体が軽くなった気がする。
「また近々電話したりするかもしれないけど、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です!」
この先いじめを無くしてくれるかはわからないけど、ちゃんと問題から逃げずに、向き合ってくれたことは素直に嬉しい。
深々と一例して、先生を見送っていたその時、先生が振り向いて悪気なく訊いた一言に、私の顔は強張った。
「そういや木谷って、兄妹いたっけ?」
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