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ブラインドとカーテンを隙間無く閉め、手を洗い、着替えを済ましてから蓮君の部屋へ向かった。
ノックをすると返事があったので扉を開いた。
本を読んでいたみたいだ。
閉じたものを手に持ったまま、心配そうな顔で「大丈夫だった?」と訊かれた。
「うん。大丈夫だったよ」
「よかった」
「ただ、前に一度、先生に、私と蓮君が話す姿を遠くから一瞬だけ見られてた」
「嘘?」
驚いたのか、蓮君は持っていた本を床へ置いて、勢いよく立ち上がった。
焦ったような表情をしている。
「大丈夫じゃないじゃん」
「兄妹がいたか?って訊かれたから、従兄弟だって答えた。大丈夫だよ。私の答え、先生何も疑ってなかった」
「………。いつ見られたんだろ」
「それが、わからないの。もしかすると、私が犯罪を知る前かもしれない。カーテンとかブラインドは気をつけるようにしてたから」
「それは、俺も気をつけるようにしてた」
少しの間、沈黙が流れる。
見られたからって、すぐにバレるわけではない。
側から見たら、普通の男の子、指名手配の紙が配られていて、それを凝視していないかぎり、気が付くわけがない。
「カーテンちゃんとしてきたから、下に行って、おやつ食べよう。今日、お腹空いちゃった」
「うん」
私が声をかけると、蓮君は、神妙な顔つきから優しい笑顔に変わった。
蓮君の後ろ姿を見ながら階段を降りていると、バレなくて本当によかったと、心から思った。
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