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雨が好きだなんてきっと変に思われるだろうけど、私には雨が好きな理由がいくつかある。
一つ目は、子供の頃から雨の日にはいい事が起きやすかった。笑われるかもしれない。だけど本当なの。
欲しかったオモチャを買ってもらえたり。大好きな食べ物を作ってもらったり、とにかく嬉しいことが多かった。
二つ目は、嫌いなマラソンが中止になるから。
三つ目は、雨の日には、お母さんがたくさん一緒にいてくれて、遊んでくれた気がする。
最後に一つ。
これは、雨にも失礼かもしれないけど。
私の背景には、雨が似合っている気がする。
真っ青な空と輝かしい太陽は、私とはまるで違いすぎて、その下に立っているとどこか申し訳なくなる。
でも雨の日だけは、こんな私でもこの世界を歩いてもいいような、そんな気分になれるの。
思い当たる理由は、それくらい。
やっぱり雨に、失礼だったかな。
トースターでパンを焼き、一人でそれを食べて、行きたくもない学校へと向かう。
別に誰もいないこんな生活なら、わざわざ学校に行かなくても良いのだろうけど、そんな考えが過ぎる度に、温かな暖炉の前で、優しい顔をしたおばあちゃんとハーブティーを飲みながら高校だけは卒業するって約束したことを思い出す。だからなんとか頑張っている。
その時も確か、外は雨が降っていた。
先日買ったばかりの長靴を履いて、お気に入りの淡い紫色の傘を差す。
「行ってきます。お母さん、おばあちゃん」
私は広々とした玄関に立って振り返り、小さな声で囁いた。
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