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 家を出ると、灰色の空が出迎えてくれた。   思った通りの弱々しい小雨が降っていて、お気に入りの傘を開く寸前、雨雫が私の腕にポタンと落ちた。  家の周りの、いつもは胸を張っているように生えている木々が、おぼろげながら水分を受けている。  これくらいの雨が、一番好き。  私の家は、山の麓にある。  学校も山道を登っていく途中にあり、家から北西に三十分ほど歩いたところに建っている。  近くにバス停があり、家から遠い人は、バスを利用したりして通っている。    行きは上りだから疲れるけど、帰りは下りなので楽ちんだ。  永遠に登校時間だったらいいのに。  高台から見える町の風景や、草木の揺れる様子などを見ながらゆっくり歩いていると、すぐに学校に着いてしまった。  鉛色の背景だからか、いつもは騒々しい昇降口が、ワントーン色が沈んで見えて物静かに感じた。心なしか、みんなの口数も少なく、浮かない顔の人が多い気がする。  天気が悪いと人の気持ちも沈むから、みんないつもより話さなくなるのかな。  それならずっとそのままがいいと思ってしまう。  明るいのも、うるさいのも苦手な駄目な私は、今日みたいな日が毎日だったらいいのになと思う。  
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