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 先生の目を気にしながら、時々受ける嫌がらせに耐えた。  それでも、家では蓮君と二人、穏やかな日常を送ることができていたのが救いだった。  彼には、学校での嫌がらせをあまり言わないようにしていた。  心配させたり、嫌な気持ちにさせたくなかったから。  そんな日が続いたある日のことだった。  その日は先生が出張だったため、酷いことをされる回数が多かった。  だけど、されるといっても、置いていた体操服を濡らされたり、調理実習の時間に無視されたり、スマホに嫌がらせのメッセージが送信されたり、その程度だった。  だけど、一つだけすごく嫌なことをされた。  朝、蓮君が作ってくれたお弁当を、食べる前に捨てられた。    今までの幼稚な嫌がらせは、されたらそりゃ困ることばかりだけれど、なんとか耐えることができていた。  だけど、食べ物を、蓮君が作ってくれた物を捨てられて、さすがの私も腹が立った。  だから柏木さんに直接言いにいった。  言って意味があるのかはわからないけど、何かせずにはいられなかった。  「お願いです。こんな酷いことするの、やめてほしい」  必死で訴える私の顔を見て、柏木さんは「怖」と言って吹き笑いをした後、彼女の仲間と顔を見合わせながらまた笑った。  その瞬間、私の中で、何かがプツリと切れた。  この人たちが、私を底辺の人間だと見ている限り、私が何をしようが、言おうが、意味ない。    けれど、だとしても、どうしてこんな理不尽なことされなきゃいけないの。  気が付くと私は、柏木さんを突き飛ばしていた。彼女はよろけ、勢いよく尻もちをついた。彼女の、腰あたりまである、くるくると巻かれたブロンドの巻き髪が乱れる。  彼女は、「痛いな!」と叫んで、しばらくその場に留まった。  今まで騒がしかった教室が、一気に静寂に包まれる。  重く、静まり返った空間で、刃物のように尖った大勢の視線が私に向けられた。  コソコソと、耳打ちする声がそこらじゅうから聞こえる。  「ご、ごめんなさい」  我に返った私は、俯きながら、謝った。  やってしまったと思った。  何かの拍子にどこかに当たったのか、柏木さんの白い綺麗な頬に引っ掻き傷ができている。  どうしよう。明日、絶対先生に呼び出されてしまう。  みんなの顔も、声も、今この場に立っている現実も、全て怖くなった私は、教室から飛び出してしまった。  
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