エピローグ

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エピローグ

会計を済ませ、市役所に向かうために、今まで家族のために活躍しまくった愛車であるミニバンに乗り込む。 そこで妻はポツリと呟いた。 「……さっきね、言ったでしょ」 「え?」 「覚えてるか? って。 結婚する前とか、してすぐぐらいの幸せな時間のことを。 だから、利さんも覚えてて。 最後の最後まで、私は。 利さんが、『あの両親なり妹なりは何が何でも説得する、悪いようにはしない!』だとか、『金銭的に余裕は一切なくなるだろうけれど、俺たち家族はずっと一緒だ。 俺達があの家を出よう』だとか。 そう言って私を選んでくれるのを、実は待ってたんだけどってこと」 「…………!!」 この妻は、やはりずるい。 そして多分、一生かなわない。 そうだ、『やり直す』のではない、『これから始める』、妻はその言葉を待っていたんだ。 「別に、お互いに顔も見たくないって言って別れるんじゃないんだし。 離婚届を二人で持ってくる夫婦ってあんまりいないんじゃない、知らないけど。 笑っていこうよ」 子供達を見るため、後部座席に乗るのが常になっていた妻。 今は助手席でなくて良かった、運転しながらとんでもない顔になっている。 実柚、ごめん。 そして、今まで本当にありがとう。 自分には、君は勿体なさすぎたんだ―――
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