居た堪れない生活

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居た堪れない生活

あまりの不協和音に耐えられなくなり、自分と妻、そして一歳にも満たない長男は近所のアパートに引っ越したこともある。 妻の念願の両親との別居が叶ったのだ。 しかし、自分はしんどかった。 実家を離れたからか浮き足立った感がたまらなかった。 そんな不安定な時期は、妻が次男を懐妊したことにより解消された。 両親が呼んでくれたこともあり、自分達は再び実家に戻ったのだ。 両親との別居を始めて、一年と少しの間しかたっていなかった。 妻は居た堪れなかったそうだ。 苦労の果てにようやく別居がかなったのに、こんなことなら二人目なんて欲しくなかった、とまで言っていた。 妻にとっては平穏でもない日々だったろうけど、子供達もすくすくと育っていった。 次いで妻は三人目を授かった。 妻はあからさまにショックを受けていた。 次男が幼稚園に通うようになったら働きに出たかったそうなのだ。 そして、家賃ぐらいの収入を妻が稼ぐからこの家を出よう、と。 もう一度両親と別居することを夢みていたらしい。 しかしその夢は、物理的にもう当分の間かなわない。 三男も無事に生まれたが、妻はこぼしていた。 「利さんの親に妹さん。 この子が生まれるにあたって、誰も私におめでとうって言わなかったよ」
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