溜まり続けた不満

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溜まり続けた不満

日を追うごとに、妻の愚痴は増えていった。 両親のことを生理的に受け付けない、とまでいうようになっていた。 過去にあったいざこざが、両親を近くに感じるだけで頭の中で繰り返されてしまうらしい。 溜まりに溜まった妻の不満を、自分は誤魔化し続けた。 所謂ガス抜きというやつだ。 両親抜きで家族旅行にも沢山行った。 休日は子供達を連れて沢山遊びにも出掛けた。 自分の両親と妻の間の溝を、自分が橋渡しし続けた。 「私がして欲しいのは、そういうことじゃない」 妻は何度そう言っただろうか。 しかし自分は会社でも激務、体調も良くはない、そんな中で自分を理解してくれない妻に腹を立てた。 「嫁が利さんの親のことを生理的に受け付けない、とまで言ってるのに。 なんでここの家の人は皆それを放置するの? 義母さんや義父さんはどうしていくつもりなの? 私、老後の面倒なんてみるつもりないからね」 妻は両親との別居を熱望していた。 しかし、自分の給料だけで、妻と子供三人を賃貸の家で養っていけるかと考えれば、答えは否だった。 ましてや次男三男は発達障害があった。 自分が預かりしれない妻の疲労はどんどん蓄積していった。 それでも。 妻は現状を考えてこの家に踏みとどまっていたのだ。 今は無理をして飛び出すべき時ではない、せめて子供がもう少し大きくなるまでは、と。 自分はそれに甘えきっていたのかもしれない。 ある日、突然に。 転機が訪れた―――
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