もう一度……!

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もう一度……!

「……なあ……もう一度。 やり直せないか? こんな結末しか迎えられないのか……?」 言うべきことは、これではないはずなのに。 妻はもう賃貸契約もすませ、求人票を漁っている現状なのだ。 こんなことを言えば、妻を困らせてしまうのに。 こんなの自分の感傷でしかないのに……! 「……私は。 利さんには感謝してるよ。 母としての喜びを教えてくれたからね」 自分の必死の問いかけに、妻は晴れ晴れとした顔で言った。 「実家から飛び出してあてもなかった私が、こうして夫婦してこれたのも。 利さんが私を選んでくれたから」 妻は、もう両親や妹への苦情は口にしなかった。 そんなことは妻の中ではもう消化されてしまったのだろう。 もしくは、別れのこの場に嫌な思い出を持ち込みたくないのだろう。 「……ありがとう。 妻じゃなくなっても、私はあの子達の母親なんだから! 利さんとはこれからメル友だからね。 毎日ジャンジャンメール送り付けるから覚悟するように」 そう言って妻は自分に笑ってみせた。 ああ、強いな、そう思った。 自分はこんないい女性を捨てるのか。 なぜ、どうして。  間もなくして妻はパンケーキを食べ終わる。 「ああ、お腹いっぱーい、て。 そう言ったら前に利さん、『食べたんだから当たり前だろ』って言ってたよね、たしか」 最後まで、泣かせにくるし。
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