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第七章 運命の日
2021年4月7日水曜日、午後3時30分。
交差点の赤信号で停まる。
この短い赤信号が青信号に変わった瞬間に自転車で思いっきりスピードを出して次の交差点へ行くと、その交差点の長い赤信号を待たずに済む事を知ったばかりだ。
その交差点は、女子高生の通学路なのか、いつも信号待ちする女子高生がいるので特に気を付けていた。
その為か、稀に目が合う事もある気がする。
2021年5月11日火曜日、午後3時00分。
バイトが終わると、店長に呼ばれた。
コロナ禍で採算が合わないので、申し訳ないが辞めて欲しいという事だった。
このご時世だ。致し方ない。
店長は、景気が戻ったらまた声を掛けてくれる約束で、僕は了承した。
それから30分後。
いつもどおり、故意的に短い赤信号で停まる。
青に変わると勢い良くスピードを出して、次の交差点に差し掛かった時だ。
いつもは信号待ちしている筈の女子高生の一人が、僕の行き先を遮るように飛び出して来た。
彼女の顔がスローモーションに見え、目を瞑って微笑んだ。
急ブレーキも間に合わず激しい衝突音。
僕の身体は宙を舞い、激しく背中から倒れて地面に頭を打ち付けた。
「美天ちゃん! 美天ちゃん! ちょっと遮って、あの人を停めるだけって、ぶつからない自信があるって言ってたのになんで? 美天ちゃん!」と声が響く。
その声の主が僕に近付き、頭の出血をハンカチで抑えながら何か叫んでいるが、やがて意識は遠退いていった。
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